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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

また招かれた宴席で、このひとならとひそかに見当をつけた娘もある。

だが津田に対してそんなことをうちあけるのは早すぎた、おまけにだいぶいきまいたようなかたちになったことはわれながらあと味がよくなかった。

――ついぞこんなことはなかったのに。

彼はいやな顔をしながら、津田という人にはそんなふうにこちらをひきいれるところがあるので、注意しなければならないと思った。

七日の午後に和泉家へ招かれた。松尾という令嬢の招待で、同じ年ごろの娘たちが十人ばかり集まっていた。もう三度めなので、たいがい顔だけは見おぼえているが、松尾ともうひとり萩原くめという娘とが、姿も顔だちも群をぬいて美しかった。くめの家は江戸の萩原と縁つづきで玄一郎の友人の萩原準之助とくめとはまた従兄弟の関係にあるということだった。

娘たちの宴らしく、いろどりの華やかな膳部に酒が出た。夫人たちほどではないが、みんな盃を手にし、この家の三人の待女が給仕をしてまわった。

三献のあと松尾が琴を聞かせ、べつの娘二人が琴と三絃を合わせた。それから膳が代って食事になり、済むと暫くして、くめが茶の点前をみせた。