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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

雑なものどころではない。明らかにすじのとおった品である。すがたも古雅であるし、音色も深く冴えていた。玄一郎は坐りなおして歌口をしめし、むぞうさに里神楽の囃し笛を吹きだした。

令嬢たちはびっくりした。初めは気づかなかったらしい、こういう席で横笛をと云う以上は、むろんそれだけの心得もあるだろうし、しかるべき曲を吹くものと信じていた。――ところが妙な調子で始まったと思ううちに、ぴいひゃらぴいひゃらとっぴきぴなどという派手なことになった。里神楽なら子供でも知っている。彼女たちもやがてそうわかって、びっくりすると同時になかにはくすくす笑いだす者さえあった。

玄一郎は平然たるもので、馬鹿囃しを一曲たっぷりとおちつきはらっていさましく吹奏したのであった。

令嬢たちは胆をぬかれ、途方にくれた。それがもし侮辱であるなら怒らなければならない。またもしも好意から出た座興だとすれば、いちおう喝采するのが礼儀である。

――いったいどっちかしら、どうしたものかしら。

彼女たちはお互いにさぐりあい、判断がつかないのでもじもじしていた。だが玄一郎が吹奏を終ったとき、間髪をいれず、松尾が軽く手を拍ちながら明るく笑った。