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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

五

それがいっそう清楚に、彼女の美しさを、際立てるようにみえた。

「お床間が淋しくはないかと存じまして、ちょうど蝋梅が咲きはじめましたので、持ってあがりました――」

「それは有難いのですが、私のところには道具がなにもないのですよ」

「いいえ粗末な物ですけれど用意してまいりましたから」

親しい家へでも来たように、こう云って侍女を呼び、さび付きの鉄の壺や道具や、ほどよく咲いた蝋梅の枝をそこへひろげた。

「こんな雪のなかで咲くんですか」

「――室で致しますのよ」

「ああなるほど、そうでしょうね」

益もないことを云ったものだと玄一郎は自分で苦笑した。くめは花を活け終ると、べつに話をするようすもなく、とりちらした物を片づけて帰っていった。

五

玄一郎の笛の話は忽ち藩中の評判になった。

中年以上の人たちはにやにやしていた。若いれんちゅうも一部では痛快がっているふうだった。つねづね女には押えられているので、玄一郎が令嬢たちを侮辱したものと信じ、いいきみだと思ったものらしい。

だが他の青年たちは同じ意味でよけい反感を唆られ、その侮辱に対して、婦人たちが報復しないことでも嫉妬しているようだった。