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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

事実を認めるか」

「そんなことはどうでもいいのだろう」玄一郎は平然と云った、「――要点はほかにあるのじゃないか、それを聞こうじゃないか」

「あっぱれだ、よく云った」

益山郁之助は眼をぎらぎらさせた。

「それならひと言で済むんだ、こういう問題の片をつける方法は一つしかない、まさか拒みはしないだろうな」

「場所と時刻を聞こう」

「わかりがいいな、所は観音寺山の二本松、時刻は明日の朝六時としよう」

玄一郎は黙って頷き、かれらの眼を集めながらそこを去った。

並木のところで取巻かれたとき、玄一郎はもう肚をきめていた、それも江戸を立つまえに考えていたのであるが、忍耐のできる限りはして、ぎりぎりというところへきたら思いきってやる。これまで来た者はそのまえに甲をぬいだ。それは事を荒立てないためであったが、結果としては国許のれんちゅうを増長させた。

こんどはやらなければならない、政治の改革という事業のためにも、江戸の人間が腰抜けでないという証拠をみせ、お互いの正音を出しあわなければならない。

――いずれは誰かがしなければならないことだ、それをおれがやるだけだ。

彼はこう思ったのである。