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いさましいはなし
いさましい話
山本 周五郎
「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页
これは益山郁之助らの詐謀であって、実はかれらの仲間の吉川左次馬なる者を、勘定奉行に仕立てたので、手代とつきあわせた結果、すぐにわかった。
玄一郎が城内押込めになった二日後、津田庄左衛門が和泉図書助の私邸へいって自訴した。そうして益山、上原、三次の名が出、さらに吉川左次馬、中野市之丞というふうに、つぎつぎと連類が挙げられたということだ。
浪花屋から渡された金は、少し手をつけただけで、殆んどそのまま三次軍兵衛の住居から出た。津田庄左衛門ほか六人は住宅檻禁となり、次席家老は責をひいて職を辞した。
この出来事は、玄一郎にかなり大きい衝動を与えた。彼は津田を買いかぶりはしなかったがそんなことをする人とも思わなかった。若いころ放蕩者だったという理由で、藩中には津田がまだなにをしだすかわからないという評もある。
事実そういう例は少なくない、若いころの歓楽の思い出が、老年の血を激しく燃え立たせて、みぐるしい失態をするようなことはよくある。
――だがそのためにあんな卑しい事のできる人とは思えない、……もし事実だとすれば、おれにはあらゆる人間が信じられなくなる。
玄一郎にはそこがどうしても割切れず、深い傷のように心に残った。