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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

ぜんたいに枯淡な、すがすがしい気品に包まれている感じだった。

こういうひとがらにもかかわらず、津田が孤独な人だということに、玄一郎はやがて気がついた。津田には親しくつきあう者がない。注意してみると誰もが津田を敬遠しているようである。

津田が誰に対しても丁寧であるように、周囲の人たちも応待はきわめて鄭重であるが、その鄭重さには一種のよそよそしさと冷たい隔てが感じられた。

――あの人は本当は狷介なのかもしれない。

玄一郎はそう思った。誰に対しても丁寧なのは、実は誰をも近づけたくないための、拒絶の表現かもしれない。

ほかにも事情はあるらしいが、彼はこう考えた。そうして時が経つにしたがって、しぜんと津田のひとがらに惹かれていった。

役所のほうは不愉快な状態が続いていた。事務はいつも停滞し、投げやりにされている。いつまでも整理のつかない書類があるので、これはどうしたのかときくと、「私は知りません、それは楢原の係りでしょう、いや待って下さい、武井でしたかな」

こう云ってそっぽを向いてしまう。そうして楢原や武井の係りではなく、その当人の役目だということがわかると、「ああそうでしたか、では私がやりましょう」