轻松读懂日语经典作品
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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页
客の中の竹中啓吉が土地訛りの強い言葉で云った、「だがな、――このうちは隠れキリシタンなんだ、永平寺は世間をごまかすためさ、本当は何百年もまえからキリシタンだったのさ」
「まさか」と相手は声をひそめて云った、「隠れキリシタンなんて、よくは知らねえが、九州かどっかの話じゃあねえのかい」
「日本全国だ」と竹中はめし茶碗で濁酒を飲み、味噌漬の山牛蒡をぼりぼり噛みながら云った、「秋田だか青森のどっかだかには、キリストの墓まであるってことだからな、こんなところに隠れキリシタンがいたってふしぎはねえさ」
ここは福井県大野郡山品村というところで、山ひとつ南へ越すと岐阜県になる。山品村は涸沢をはさんだ谷合の村であり、日の出がおそく日没が早い。涸沢の左右にある細長い田畑のほか、両方の山腹に段々畑と棚田があって、南側にある岩屋の泉は冷たいため、棚田へは涸沢の僅かな水を、汲みあげるよりほかはなかった。
ひとくちに云えば貧困農村で、副産物の木炭、涸沢にのぼって来る季節の川魚の焼干し、屋根を葺くための茅葭、そして僅かな繭などで生活を支えてきた。けれども電化製品のために木炭はさっぱり、屋根もスレート葺き、化繊の発達で繭も思わしくなくなるというわけで、村はいま莫大な借金を背負っていた。