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おごそかなかわき

おごそかな渇き

山本 周五郎

「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页

青空文庫

口笛の短い擦音に似た鳴き声であった。

「あれはつぐみよ」りつ子は仰向いて小鳥たちを見送りながら云った、「黒つぐみだったわ」

「どうしてわかるの」

「毎年いまごろになると、お父さんが捕って喰べさせてくれるの」りつ子はちょっと肩をすくめた、「かすみ網は禁止されてるっていうけれど、この辺ではみんなやってるのよ、あじさしだとかやまがらだとか、ほおじろ、うぐいすなんかも捕れるわ、でもあたし、つぐみがいちばんおいしいと思うわ」

夏になるといろいろな鳥が鳴く、つつどり、かっこう、ふくろう、それからなんていう鳥かわからないけれど、「きよきよきよ、きよちゃんたらぴっぴ」って鳴く鳥もいる、などとりつ子は云った。

「本当かい」松山隆二はふきだした、「その、なんとかでぴっぴっていうのは」

「ほんとなの、本当にそう聞えるのよ」

「じゃあ」と彼は云った、「きよっていう名の子がいたら平気じゃあ聞けないだろうね」

「平気どころじゃないわ、小学校のとき同級生に清水きよっていうひとがいたの、痩せていて神経質な、でもずいぶんきれいなひとだったわ、そのひとねえ、――クリスマスのとき、きよしこの夜っていう歌があるでしょ、あの歌をうたっても怒るの」