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おごそかなかわき

おごそかな渇き

山本 周五郎

「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页

青空文庫

「でもきょうだいのようにしているほうが、人から怪しまれないんじゃないかしら、東京までは遠いんだし、おじさんなんて云えば、却ってへんに疑ぐられると思うわ」とりつ子は云った、「それよりもさ、これなんだかわかって」

隆二は大きな竹の皮包みを見て首を振った。りつ子はおとなっぽく、自慢そうに微笑しながら、誇らしげに竹の皮包みをひらいた。そこには大きな焼きむすびが三つ、重たげに並んでいた。包みはほかに二つあり、りつ子はその二つのほうへ手を振った。

「これは」と隆二は咎めるように云った、「お米のむすびじゃあないか」

りつ子は彼のおどろきを待っていたように、また自慢そうに頷いてみせた。隆二は少女の心をはかりかねた。米は彼が飢え死しかけていた数日、おも湯や粥にして喰べさせてもらっただけだし、回復してからあとは、いつも粟粥かもろこし餅であり、こんど出立するときにも、竹中啓吉が持たせてくれたのは、同じ物であった。

「お父さんが拵えてくれたの」

りつ子は頭を振った。すると髪の毛が大きく揺れて顔にかかったので、髪の毛を短く切ったことがわかった。父が炭焼きにいったあと、自分で拵えて来たのだ、とりつ子は云った。