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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页

青空文庫

わかりきっているじゃないか。こういって、もういちど投げるように冷笑した。

お石が遠慮もなく叫びちらすようになったのはその頃からのことだ。彼女は初めての画会のときまでは、少しばかり度外れなほど彼を愛し、はたの者にはみぐるしいくらい彼を尊敬し、彼が自分の良人であることを誇った。

だが落ちめになるとしだいに変り、まるで手のひらを返すように、ずけずけと不遠慮にふるまいだした。集まって来る友達はもう今では三人きりであるが、かれらが来るとふきげんになって、お茶ひとついい顔では出さない。酒とでも云おうものなら、とたんにぱりぱり叫びだすのである。

――酒だって、へ、太平楽なこと云っちゃいけないよ、こっちは晩に炊くお米がないんだよ、おまえさんたちはくらい酔ってりゃいいだろうけど、あたしゃおまんまがなきゃ飢死にをしちゃうんだよ、酒を買って来いだって、へ、自分でいってみたらいいだろ、掛で売って呉れる店なんか隣り町にもありゃしないんだから、人並なことを云うんならたまにゃ人並な仕事をするもんだ、朝っから晩までぶらぶらしていて、ろくでもないことをがあがあ饒舌ってばかりいて、それでこんにちさまに相済まないとも思わないのかい、飲みたきゃ井戸端へいって井戸替えをするほど飲むがいい、おまえさんなんか水でも飲んでりゃたくさんだよ。