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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
六
六
その日は昏れ方まで、五兵衛の家で酒を飲み、燈のつくじぶんに家へ帰ったが、朝になると又五郎はすでにいなかった。
五兵衛は友達のところだろうと思っていたが、三日ばかりして井上と松屋が来、それから島田へ問い合わせたところ、吉原で別れてから三人とも会っていないことがわかった。
五兵衛はまだ出奔したとは考えられず、又五郎が酔って阿波屋の話をしたこと、小梅の寮を借りて屏風を描くと云ったことを思いだし、たぶんそっちへいっているだろうと、念のためすぐ石町へ確かめにいった。
しかし阿波屋へもいってはいなかった、あの朝帰ったきり顔をみせないという。そこでみんな初めて慌てだし、手をまわして捜したのであるが、十日と経ち三十日と経っても消息がなく、とうとう失踪ということがはっきりした。
「おれは死んだと思う、絵が描けなくなっていたからな、どうもそういう気がする」
「そうかもしれない、実際もう半年以上も描けないようだったな」
「狩野の麒麟児といわれたうえ、ひところは新しい画道の先導者として、ずいぶん世人の注目をあびていたからな、それにあの神経ではこれ以上は堪えられなかったかもしれない」