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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
――しかしもう昂奮もなし刺激もない、四人の気持はもうばらばらで、いっしょにいることが逆にお互いの孤独感を強くした。
――ごまかしだ、なんという青くさい、しらじらしいごまかしだ、逃げだそう。
それぞれの部屋へ別れるとすぐに、又五郎はその家をとびだした。まだ宵を少しまわった時刻と思われるのに、もう霜でもおりたように道は凍てて、こがらしめいた風がかなり強く吹いていた。――駕籠にでも乗りたかったが、自分では一文も持っていない。身も心も憔悴し疲れて、寒さに絶えず震えながら、なかば駈けるような足どりで歩いていった。
家へ帰ったのは十時ごろだったろう、手足のさきは寒さのためにこごえ、おまけに酔がさめたのと空腹とで、みじめにがちがち歯が鳴った。どんなにあしざまに喚かれることか、そう思いながら路地をはいってゆくと、ずっと雨戸を閉めて暗くなっている長屋の一軒だけ、灯を明るくして賑やかに女たちの笑い囃す声の聞える家があった。
――おれの家らしいが、しかしまさか……。
彼は首を捻った。近寄ってゆくと、それは正しく自分の家で、女たちの饒舌のなかに、お石の高笑いの声がはっきり聞えた。