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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页

青空文庫

又五郎はそっちへいそぎ足にゆき、びっくりして、なにか云うお石をつきのけるように部屋へあがった。

さすがに女は女らしく、あれほど狼藉にちらかっていたのが、ともかくいちおう片づけてある。又五郎はまっすぐにいって納戸をあけた。

そこには五段の棚があり、手をつけない紙や、写生帖や下描きや、描きかけの絵などが、分類してしまってある。その上段の、いつもそこに置いてある絵が、心配していたその絵が、そこにはなかった。

「どうしたのさ、そんなとこ今じぶんどうしようってのさ、もう寝るんだからひっかきまわしたりちらかしたりしちゃいやだよ、よしと呉れってんだよ、寝るんじゃないかね」

「――ここに置いた絵をどうした」

「絵って、ああ、あれは阿波屋の旦那にお渡ししたよ、だってどうお返辞すればいいかわからないし、旦那は旦那でいくらなんでも今日は仕上ってるだろうって仰しゃるし」

「――まだ描きかけだということは知っている筈じゃないか」

「そんなこと云ったってもうだめだよ、あたしゃもうごまかされやしないよ」お石の酔って赤くなった顔が醜く歪んだ、「――いやこれは気にいらない、これは描きかけだ、こんなものは人に見せられない、滑ったの転んだのって、これまでうまいことを云っちゃあたしをごまかしといて、破いちゃったとかひっ千切ったとか云って、それで本当はみんな