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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页

青空文庫

五

かげでこそこそ売ってたんじゃないか、隠れて売っちゃあ飲んでいたんじゃないか」

「――阿波屋から幾ら貰ったんだ」

「大きなお世話だよ、知らないよ、阿波屋の旦那は仰しゃったんだから、絵をごらんになるとすぐ仰しゃったんだからね、なんだ描きかけだなんて、もうすっかり仕上ってるじゃないか、もうどこに一点も筆を入れるところはないじゃないかって、そう云って」

「うるせえ、金は幾ら貰ったんだ」

又五郎は立って、凄いような顔をして、ぐいと烈しくお石の肩を掴んだ、お石はそれをふり払い、眼をぎらぎらさせて叫んだ。

「そんなことおまえさんの知ったこっちゃないよ、男はね、金のことなんかに口だしをするもんじゃないんだろ、少しばかりの金に眼の色を変えて、みっともないってんだよ」

「うるさい、黙れ」

お石の頬でびしっと高い音がした。

五

「ぶったね、おまえさんあたしをぶったね」

お石はこう叫んでむしゃぶりついた。又五郎はなお二つ三つ、平手打ちをくれ、足搦みをかけてひき倒すと、お石の上へ馬乗りになり、ぐっと押えつけて動かさなかった。お石は足をふんばり、噛みつこうとし、どうにもならぬとみてひいと泣き出した。