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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
「いいよわかったよ、返しといで、あたしゃもうたくさんだ、もう飽き飽きした、辛抱が切れたよ、あたしゃひまを貰うからね、うちへ帰るからね、そう思っと呉れよ」
又五郎はそれを背に聞きながら外へ出た。
――風は少しおちたが寒さはきびしく、道のぬかったところはばりばり凍っていた。町ごとの木戸で親が急病だからと断わり、なかば走るようにいそいでいったが、石町の店へ着いたのは夜半をまわっていた。
阿波屋は間口五間の店の左側に、くぐりの附いた一間の門があり、奥へはそこから出入りをする、それは知っていたけれども、又五郎は店の大戸を叩いた。
「お願い申します、久堅町の平野でございます」
こう繰り返しながら叩き続けた。
店の者が起きて、中から用件をきいて、そして奥へ取次いだのであろう、暫くすると店の横の敷石の路地に下駄の音がし、すぐ中からくぐり戸があいた。加平が自分であけに来たのである。
それから奥の二階のひと間へ導かれると、妻女が埋み火の上へ炭をついだ火桶を持って来、なお「もうぬるいかもしれないが――」などといって、茶を淹れて呉れたりした。
又五郎は坐るとすぐに袂の金包みを出し、自分が留守だったので、お石が断わりなしに遣い、五両のうちこれだけしか残っていないこと、遣った分は借りたことにして、次に描くもので取って貰いたいこと、今