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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
井上や貞造や島田などは、身につまされるというふうにそう云っていた。だが差配の五兵衛はそうは思わないと云った。
「平野先生はきっと帰っていらっしゃる、私はそう思いますよ、ええきっと帰っていらっしゃる、――私はあの家へは手をつけません、あのままにして何年でも待っていますよ」
しかし月日はずんずん経っていった。一年と過ぎ二年と経った。こうしてまる三年ちかく、又五郎からは音沙汰もなかった。
あしかけにすれば四年めの九月、日本橋石町の阿波屋の店へ又五郎があらわれた。
とつぜんでもあったし、まるで乞食坊主のような恰好で、加平にもすぐにはみわけがつかないくらいだった。
古びた色の褪めた袈裟ころもに頭陀袋をかけ、穴のあいた網代笠をかぶり草鞋ばきで、そうして埃まみれという姿だった。
湯を浴びて借り着の袷になり、酒肴の膳を前に、加平とさし向いに坐った彼は、初めて久方ぶりの挨拶をし、無断で出奔した詫びを云った。
「そんなことは構いません、帰っておいでなさればそれでいいので、しかし、いったいどこでどうしていなさった」
「どこと定ってはおりません、いろいろな人足もしましたし、飯炊きも樵夫もやりました。