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おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
禅寺へ入ったこともございます、雲水になって乞食も致しました、京から奈良、加賀、信濃から甲斐というぐあいにわたり歩いたものです」
日にやけたばかりではない、全体にがっちりと逞しくなり、顔つきも明るく、押しても突いても動かない重厚な力感にあふれていた。――盃を交わしながら、ひとわたり放浪ちゅうの話が済むと、加平はふと改まった眼つきで、
「それで、これからいったい、どうなさるおつもりですか」
「絵を描いてまいります」又五郎は冴えた顔つきで答えた。「――まずあの六曲一双を描きあげたいと思いまして」
「結構ですな、ぜひ描いて頂きましょう」
「それからごらんのとおりのありさまなので、いつかのお話の寮と、描きあげるまでのお世話を願いたいのですが」
「ようございますとも、すぐその支度をさせましょう、――だがそうするとなんですな、旅でなにかいい収穫があったのでございますな」
又五郎は眼を伏せた。それから静かな調子で、一語ずつ区切りながら云った。
「私は御家人の三男に生れ、絵が好きで、狩野家へ門人にはいり、寝ても醒めても絵のことばかり考えて育ちました、絵を描くということは、ほかのどんな仕事よりも尊く高い意義がある、そう信じておりました、――しかしこんど世の中へ出て、躯ひとつで生きてみて、人足をし百姓のてつだいをし、旅籠の飯炊きなどをし