轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おれのにょうぼう
おれの女房
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页
二
――彼は江戸川のほうへ歩いていた。牛込の矢来下に友達の井上孝兵衛がいる、無意識にそっちへ足が向いたのだが、ふと気づいて立停り、暫く自分の足もとを見まもった。
「つまらない――同じことだ、同じことの繰り返しだ……もうたくさんだ」
こう口のなかで呟き、江戸川へ出るとそれに沿って、関口の大洗堰まで歩いていった。そのあたりは人家も少なく、田畑や林のひろい展望と、四季それぞれの、自然の豊かな景物とで、風流雅人のあいだに知られていた。――又五郎は大洗堰から二三丁もかみへゆき、川に近い秋草の中へいって腰をおろした。
「――遠山、碧層々」
彼はこう呟き、両手で抱えた膝の上へ、頭を垂れて、ふかい溜息をもらした。
二
平野又五郎は御家人の三男坊に生れ、小さいじぶんから絵が好きで、いい養子の縁談があったのを断わり、十六歳のとき狩野信近の内門人にはいった。
それで親たちとは絶縁ということになったが、彼はもちろん承知のうえで、絵さえ描いてゆければ親も兄弟も要らない、金も名声も要らないと思い、あらゆるものを絵にうちこんで勉強した。
信近はまだ法橋にはなっていなかったが、すでに狩野派の長老であり、御殿絵師としても東西を圧する威勢をもっていた。