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おれのにょうぼう

おれの女房

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,296 字 · 46 页

青空文庫

お石に対するかれらの軽侮が、彼の反抗する気持を煽り、お石を伴れて出ることに、一種の壮快な自負をさえ感じたのであった。

小石川久堅町の、その裏長屋に家を持ってから、もう十年あまりの月日が経っている。彼が出たあとを追って、島田敬之助、松屋貞造、井上孝兵衛という三人の門人も、狩野家から去り、又五郎を中心に新しい画風を興そうとして、再出発することになった。島田と井上は貧乏な小旗本の子で、貞造は神田今川橋の松屋与平という反物商の四男だった。

またこれらの関係から、新しい画風という魅力にひかれて、若い者が多く集まるようになり、久堅町の長屋のひと間は、昼も夜も客の絶えまがないほど賑わった。

家をもって二年めくらいまではそんなふうで、絵を頼む者も少なくなかったし、彼をとりまいた新勢力が、ぐんぐん伸びるようにみえた。しかし二年めの秋、彼が日本橋矢の倉の亀井楼で画会を催したあと、情勢はまったく逆転したのである。

その画会では四種の三幅対と、撫子を描いた二曲屏風とが、彼の自信のある作であった。古典や既成概念をきりすてて、まったく独自な手法と、大胆不敵な構図とで、島田や松屋や井上などはもちろん、まわりの青年たちは喝采し眼をみはったものであるが。