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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「坊ちゃん/\、この宿はお祖父さんの古戦場ですよ。坊ちゃんは雲助というものを御存知でしょう? 私達の来た時分には車屋がまだその雲助気質で、悪く強いたものです。何でも木本君のことを奥ん坊と言ったのが原因で車屋と大喧嘩をしましたよ」

と少時途切れていた思出語りを続けた。

「奥ん坊って何です?」

と僕が訊くと、

「奥州者のことです。彼方の人は赤毛布を着て風呂敷包を担いで田舎漢丸出しですから、奥さんとか奥ん坊とかいって馬鹿にされます。車屋が煩く勧めた末、『何だ、この奥ん坊め』と言ったのです。此方は東京も日本橋の出身でしょう? 黙っちゃいませんや。『人を見損うな』と言い返しますと、『汝等こそ人を見損うな。亀山の勘六さんを知らないか?』と来ました。『そんな田舎漢を誰が知るものか』と答えた時先方が打ってかゝったことになっていますが、実は然ういいながら木本君が蝙蝠傘で撲ったのです。『汝!』と俥を置いて組みついて来ましたが、此方は機先を制しています。私も加勢をして到頭叩き倒してしまい、行きがけの駄賃に踏んだり蹴たりしてやりました」

「大いに江戸っ子の為めに気を吐いたのですな」