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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

とお父さんが喜んだ。

「ところがそれから先がいけないのです。町中でしたから忽ち人立がして、勘六の仲間も駈けつけて来ました。勘六は腰が抜けたと言って往来の真中へ胡坐をかいたまゝ動きません。『さあ、この怪我人を何うして下さる』というような次第で、今度は車屋仲間が私達を取り巻きました。江戸っ子も斯うなると全然意気地がありません」

「膏薬代を取られましたね?」

「膏薬代丈けで済めば結構だと思いましてね、木本君は、『おい車屋さん、お前さんは真正に腰が立たないのかい?』と和解的態度に出ました。しかし勘六は、『散々踏んだり蹴たりして置いて、へん、今更何だいな? 抜けた腰が立つものかいな』と尻捲りをして威張っています。その間も車屋仲間は穏かならぬ権幕をしていましたから、私達は実際何うなることかと心細くなりましたよ。ところへ『一寸御免よ』と言いながら弥次馬を押し退けて入って来た二人連れがありました。『何だ彼だと言っても結局この男の腰さえ立てば文句はないんだろう?』とその一人が言いました。『はい、立つようにさえして貰えば何も申しません』と勘六は最早何程にかなったと思ったようでした。