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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
お前がうっかり商売に手を出そうものならこんななけなしの身上は瞬く間に飛んでしまうよと言って、却って現状維持に賛意を表しているのさ。しかしやるよ。屹度やる」
とお父さんは唯やる/\とばかり言って、何をやるのだかまだ見当がついていないらしい。けれども先頃までは、「やる」という動詞には必ず「今に」という未来の副詞を冠せたものだが、今日はそれを省いている。何だか分らないが、もう直ぐやる気らしい。お父さんは靴屋と眼鏡屋の番頭のお蔭で発憤したと見える。少くとも「今に」という言葉を靴屋か眼鏡屋へ落して来た。
「時に君は熊本だったが、熊本は余程まだ人文の進まないところだね」
と少時してからお父さんが話を全く別の方面へ持って行った。
「何うして?」
と三輪さんは直ぐに釣り込まれた。
「水道もない。電車もない。都会というよりも森の中に家が沢山寄り集まっているようなところじゃないか?」
とお父さんは見て来たようなことを言った。
「能く知っているね」
と三輪さんは案外の感を語調に表した。
「日本にいて日本のことを知らなくて何うするものか。君は横手の五郎が木山弾正の生れ更りだという話を知っているかい?」