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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

するともう一人が側の豆腐屋か何かの店から十能へ火を一杯掬ってきて、突然勘六の尻へ当てがいました。忽ち勘六は弾機仕掛けのように立ち上ったばかりか火と見ると一二間飛び退きました。『巫山戯やがると真正に足腰の立たないようにしてやるぞ!』と仲裁人は車屋達を睨みつけました。結局、木本君と私は撲り徳ということになったのです」

「危いところでしたね。しかし好い仲裁人があって結構でしたよ」

とお父さんも安心したが、僕も胸を撫で下した。

「私達はその二人と一緒に関の地蔵さんに参詣して別れました。参宮でなくて大阪へ行くのだそうでした。危難を救って貰ったのですから後日の為めにと思って名を訊いても『私達は堅気のものじゃありませんから』と言って笑っていました。博奕打ちだそうです。何も縁だからと言って私達に昼飯の御馳走をした上に、この道中では特に喧嘩口論を慎むようにと懇々説諭をしてくれました。私達は感心しましたね。博奕打ちも決して悪いものじゃありませんな。私はあの事件以来遊び人と聞くと妙に懐しいような気がしますよ」

と老人は話し終って笑った。

「木本の鬼瓦が博奕打ちに説諭をされたとは好いことを承りました」