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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
昨日相の山でお杉とお玉の踊りを御覧になりましたか?」
「彼は見たが、昔から名物になっている程のものでもないようだね」
「あれにまず伊勢音頭でございますな、御覧になるものは」
「伊勢音頭で思い出したが、芝居でやる彼の古市の油屋は今はもうないようだね」
「有りますとも、相の山から古市へ入ると右側に油屋旅館というのがございましたろう? あれでございますよ」
「あれかい? しまった。昨日彼処で昼飯を喰べて連れの人に別れたんだが、唯の宿屋じゃないか?」
「今は宿屋でございますが、あれがその『伊勢音頭』の油屋で、お紺の使った品物や貢の刀痕のついた襖や衝立が現に残っております。折角お寄りになって惜しいことを致しましたな」
「つい宿屋だとばかり思っていたもんだからね。道理で彼の老人も古市へきて油屋へ泊らなくちゃと頻に言っていた。実際惜しいことをしたよ」
「又黴菌趣味か。古道具の疵物なんか何うでも宜いじゃないか」
と団さんは海女の話ほどに力を入れない。しかし亭主は、
「油屋の白井さんはナカ/\の豪物でございますよ。先代が亡くなると直ぐに抱えの女郎衆を悉皆親元へ帰してやって旅館に商売替を致しました。