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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「謙一、お湯に入っておいで」

と僕には命令的に来る。毎日のことなので僕は風呂場の凝り方によって宿屋の格式を判定するようになった。柊屋のは大理石に色硝子ずくめの素晴らしいものだ。

「京都は何うだね? 住み心地は」

と御飯を食べながらお父さんが訊いた。

「落ちついていて好いそうだよ」

と柴さんが答えた。

「好いそうだなんて他人ごとのようだね。君は何うだい?」

「僕は東京で生れて東京で育ったんだから、東京以外の生活は生活の模倣のような気がして些っとも身に沁みないね」

「極端なことを言うぜ。朝鮮満洲とでもいうなら兎に角内地なら何処でも同じことじゃないか?」

「同じことさ――東京以外ならね」

「それ程までに思うなら早く東京へ帰って来ることだね」

「もう間もなく帰るよ。そうして教員の足を洗う」

「何だ/\? 不平かい?」

と団さんは盃を置いて乗り出した。

「不平も大いに手伝っている。しかし個人としての不平でなくて階級としての不平だ」

「同情するよ。僕も行政官と技術官の待遇に兎角甲乙のあるのが不平でね、到頭官を辞したんだよ。恩給に漕ぎつけるのを待っていて局長と大喧嘩をしてやった。『おれだって法科をやっていればとうに局長になっていらあ。