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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

婦人病には猿の頭が利くが、これも利く。他では二円五十銭ですが、此処では一円五十銭……」

と蝮蛇屋が蜷局を巻いている。すべて大阪では廉くて利きが早いとなれば蛇や鰻の干物が斯ういう霊場でも売れる。

此処へ来たら五重の塔へ登るものだとあって、埃だらけの材木の間を息の切れるほど攀じ潜った末、天辺から花曇りと煤煙に鬱陶しそうな大都会を見渡した。

「謙一や、危いよ」

と険難性のお父さんが注意した。

「大丈夫だよ。金網が張ってある――時々命の惜しくない連中が此処から飛び下り自殺をやるんでね」

と小川さんが説明した。

亀の池だの大鐘だのを見て西門へ戻った時、

「合邦辻はこの近所だろうね?」

とお父さんが訊いた。

「この直ぐ彼方だよ。しかし妙なところを知っているね?」

「西門通り一筋に……と義太夫の文句で思い出したのさ」

「義太夫が分るのかい? これは話せる」

と小川さんは喜んで、

「生憎と文楽座が開いていないから……」

「休みかい?」

「休みだから今夜僕が語って聞かせよう。合邦は殊に得意だよ」

「何時頃から習い始めたんだい?」

「去年からさ。津太夫張りで渋いぜ」

「未熟の果物と生水は道中特に慎むように言われて来たんでね」