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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「君、此処だよ。合邦が辻※魔堂と書いてある」
と小川さんは窓から指さして、
「君は合邦と寺子屋と何方が好きだい?」
「圧迫的に来るね。何方が短いかな? まあ何方でも得意の方を聞こうよ」
とお父さんは諦めをつけた。
「両方得意だ」
「恐れ入るね」
家へ着くと間もなくお父さんは、
「謙一や、お前一つ三輪さんへ電話をかけて見てお呉れ」
と僕に頼んだ。小川さんの浄瑠璃を聞くので急に心細くなったのかも知れない。
「何とかけます?」
と僕が太郎冠者どころを勤めると、
「別に用もないが、お昼前に何とかいうところで自動車に弾ね飛ばされた人があったね。お前も電車の中から見ていたろう? 何うも様子が三輪君に似ていたから気がかりでならない」
秘書役は手帳を繰って早速電話口に立ち、番号を呼び出して訊いて見ると、
「へえ、東京の三輪さんだっか?」
「然うです。御丈夫ですか?」
「へえ? もし/\」
「お変りありませんか?」
「へえ、お変りおまへん。東京の三輪さんだっしゃろ?」
「自動車に轢かれやしませんか?」
「一体あんたはん何誰や?」
と稍怒った声がした。
第十二回
もう間もなく下関だと聞くと三輪さんは早手廻しにハンチングを麦藁帽子に被り替えたのは宜かったが、忽ちそれを窓から吹き飛ばされてしまった。