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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

と団さんが言った。

まさか間違はあるまいと思ったが、僕は心配を始めた。余の人なら兎に角地面の上にいても失策の多い三輪さんだ。電車の中で他人の読んでいる本を翻ったという放心家だから、前後を忘却して何んな危いものに手を出すかも知れない。止めれば宜かったと悔んでいるところへ、

「暑い/\、何うも」

と先生達者で帰って来た。泥雫が坑内着から滴っている。

「溜らん/\、カラーがこんなにへな/\になってしまった」

辞して大牟田へ引き返す途中、

「何うだったね? 地獄の底は」

と団さんが訊いた。

「全く地獄の釜の底だよ」

と三輪さんは未だ汗を拭きながら、

「あんな暑い思いをしたことはない。京都のようだと言うから入る気になったが、あの昇降機を見た時には落胆したよ。しかし今更厭とも言えないんでね」

「然うらしかったよ」

「ゴーッと少時雨のように落ちる滴の中を下りると又上る様な気がしたが、最早底に着いていた。真暗で足元が悪くて心細いことゝいったら! おまけに天井の針金には電流が通っていますから成るべく屈んで歩いて下さい等と案内の男が驚かすんだもの。炭車と電線さえ避ければ大丈夫だと思っていたら、突然馬と鉢合せをしてもう少しで噛まれるところだった。