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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「九州は黄櫨の多いところですが、当県下は殊に然うです。昔殿様の御奨励で手当り次第に植えましたけれど主のない木が沢山出来まして、実を取る時に能く悶着が起ります」
と徳さんが本当のことを言った。
「実が何かになりますか?」
とお父さんは何にも知らない。
「蝋燭の原料になります」
「はゝあ、成程」
と感心している。
「手帳へつけて置き給え」
と三輪さんが冷かした。
家に着いたのは日没だった。晩餐後田鶴子さんと僕は例によって家への通信に多忙を極めた。田鶴子さんは藤崎八幡のお祭典を宛然目に見たように書いた。
「ワッショ/\、ボシタ/\というて馬を追うて歩きます。然様、四十頭も五十頭も出ますかな。勢いの好かものですばい。ボシタと申すのは敵を滅したという意味です。御承知のごと八幡さまは軍の神さまじゃけん……」
と覚束ない熊本弁さえ使っている。
「それじゃイヨ/\明日お立ちですか? 阿蘇へは私が御案内申し上げようと思っていましたに真に残念です」
と隣室では三輪さんの兄さんが到頭勧誘を諦めた。阿蘇は多少期待していたが、お流れになるらしい。団さんのような山嫌いが一緒じゃ仕方がない。