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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
大人連中はもう湯に入って寝るばかりだから、至って呑気だ。
「東郷さんという人は思い切った悪筆だね。こんな字を頼む奴も心得違いだが、書く方も余り芸術良心が無さ過ぎるね。尤もこれぐらい度胸が好ければこそバルチク艦隊を粉砕したんだろう」
とお父さんは床の間の掛物の批評をして、
「田舎漢は無暗に揮毫を頼むからね。僕の親父なんかも時々書かせられるので六十の手習という奴をやっているよ」
と三輪さんがいった。東郷さんの書は東京でも珍重されている。元帥もこういう手合にかゝっては溜らない。
「これぐらいなら甲上だよ。僕も役人をしていた頃は地方へ行くと揮毫を頼まれたもんだが、ナカ/\こうまっすぐには行かない。そうしてすっかり自分の文句らしいから豪いもんさ」
と団さんは子供のお清書を標準にしている。
「君が書いたのかい?」
「然うさ。何もそんなに驚くことはないよ。地方には官尊民卑の美風があるから高等官三等ぐらいでも無暗に書かせられる」
「何を書いたい?」
「何をって、僕は憖っか文学の分る連中よりも仕事が手っ取り早いよ。考える世話がないから簡単だ。前の晩に泊った宿屋の横額を手帳につけて置いてそれを利用する。