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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
「ナカ/\繁華だね」
とお父さんが相槌を打った。
「繁華でがんすとも。銀座でも日本橋でも早あ話が此処の呉服町を広くして家を大くしたようなもんさ。賑かなは人通りが繁いからでがんすよ。些っとも驚くことじゃねやあ」
とこの車屋は頗る愛郷心が強い。この論法でゆけば実際天下に恐れるものはなかろう。
「これが安倍川だね?」
とお父さんが訊いた時、
「然うでがんす。藁科橋でがん」
と語尾を略して、
「野崎尾崎宮崎というのが当市指折りの金持でがん。あの今の宮崎さんの先代はこの橋の袂で安倍川餅を売ってあれ丈けの身上を拵えたそうでがん。人間、俥を曳いて坂を上る如し。成る辛抱は誰もする、成らぬ辛抱駿河の辛抱といいましてな、辛抱が肝心でがんすよ」
と修身講話もどきになった。府中丈けあって車屋まで徳川家康のようなことを言う。
三輪さんの車屋もやはりお国自慢に力瘤を入れていた。何でも灸の話らしく、手越は万病に利き、桜井戸は瘍疔と来ると天下一品だとか言った。
「面疔は一刻を争うと申しますからね。愚図々々していて東京の病院で手後れになる間に此方へ駆けつけることですよ。彼処の敷居を跨いだ丈けでも利くといったくらいのもんです。