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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「道理で馬鹿に太いと思った。しかし吐月峯としてある」

「此処で出来るものは何でも吐月峯さ。しかし物を知らない奴は大きな灰吹だと思って唾をするぜ」

と団さんは最早吐月峯通を振り廻した。

引き返して静岡へ近づいた時、

「しまったなあ! 丸子のとろゝ汁を食わないでしまった」

とお父さんが残念がった。

「君は種々のものを喰わせるという約束をして置きながら出発以来一向履行しないね」

と三輪さんが振り返って言った。

「汚い家で迚も東京の旦那方のお口には向きませんよ。宿から茶わんと箸とを用意して行かなければ駄目です」

と車屋が三輪さんを慰めた。

「家丈けでも見て来ると宜かったが」

とお父さんは名物に執着が多い。そうして、

「もう何か見るものはないかね?」

「さあ、由井正雪公の墓ぐらいなもんでがんすな」

とお父さんの車屋が答えた。

「それは是非見たいもんだ。ねお、三輪君、昨日は大成功者の廟へ詣ったんだから今日は大失敗者の墓を弔おうじゃないか?」

「由井正雪は駿河の人かね?」

と三輪さんは失敗者といえば必ずこの土地の人だと思っている。

「正雪公は県人であります」

と団さんの車屋が答えた。