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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

三か月後には、みみずもたくさん見つかった。こんな小動物が生きているのだから、大きな人間の生命をおびやかすほどの放射能はまずあるまい、と推論した。原子野には復員者たちが焼け跡をわずかに片づけ、小屋を建てて住み始めていた。私はその小屋を訪ねて、健康状態を調べた。爆裂後二週間くらいはたしかに危険であったが、その後はあまりひどい影響はなさそうであった。こんなふうにして私はできるだけのことをした。しかし、なんと言ってもありがたかったのは、他の大学から同学の学者が器械をそろえて研究に来てくださったことであった。石川博士や篠原教授のおかげで正確な結果が得られた。二人の幼子もたびたびの採血試験などに痛みをこらえて、貴い材料を提供してくれた。――こうして原子野住居差し支えなしとの結論はいち早く得られ、私たちは郊外の村々に避難している市民に向かい、すみやかに焼け跡に帰り再建にとりかかりなさい、と呼びかけることができたのだった。

こうして当面の二つの仕事は片づいた。熱はまだ続いていて、三十八度を越す日も多かったが、とにかく杖を頼りに歩くことはできた。そのころ私は、戦火に滅び亡き数に入った教え子と妻をとむらうため、半年の喪に服して、髪を刈らず、ひげをそらず、入浴せずにいたため、多くの知人から変わり者と思われていた。