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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
科学者
科学者
宝石を掘り出す坑山労働者は、宝石を飾る人とまったく反対の生活を送っている。明るいシャンデリアの下で、おいしい酒に酔い、楽しい音楽に乗って、踊りあそぶ貴婦人の胸に輝く宝石は、だれがどこでどんなにして探し出したのであろうか? ――人の住まぬアフリカの山の中にぽっかり口をあけている坑の中へ、額灯をたよりに入って、行き行きて行きついた突き当たりの土に向かって、つるはしをふるう労働者。小さな石ころ一つにも、宝石か、ただの石かと鋭い鑑別の目をそそぎつつ、全身の力をこめて、新しい土を掘り開けてゆく。ただ美しい宝石を見つけ出そうという意志と、必ず出るという信念と希望と、見つけ出すまではやめぬぞという忍耐と、あくまで掘り続ける体力と。――一生掘り続けて、ついに宝石を見つけ出さずに終わるかもしれない。たくさんの先輩がそんなふうで志半ばに坑の中で死んだ。だが、言葉どおりしかばねを乗り越えて次の者がつるはしを受けついだ。掘り出した宝石をだれがどこでどんなに用いるかは知らないが、罪のもとにだけはなってくれるな、と念じながら掘ってゆく。――
――科学者は文明を生産する労働者だ。