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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
共に笑い、共に泣き、共に恐れ、共に働く、その真実の生活は、収容所の見掛けばかりの愉快な生活を送っている孤児にとって、限りない魅力を感じさせるものにちがいない。さればこそ、島の収容所から死の逃亡をあえてした子もあったのだ。その子は浪の上に力尽きつつ、青空をあおいで水の下に沈んでいったろう。
孤児をして「真実」に生きさせよ。苦しくても、さみしくても、悲しくても、その苦しさ、さみしさ、悲しさをごまかさず、そのままひたすら真実に生きさせよ。
孤児はついに真実孤児なのだ。
孤児として生きるのが真実の道なのだ。
美しい思い出の父母を胸に抱いて、この真実の道をゆくことが孤児の幸福である。
孤児の幸福は、親のある子の幸福とは違うところに見いだされるものである。それを見いだして、それを得る道へ導くのが、孤児を世話する人びとのつとめである。
親のない子に親のある子の真似をさせ、虚偽の幸福を強いて与えようとするのは、軽率であり、不親切であり、ついに残酷である。どんなに役者をそろえて芝居をしたり、ごまかしたり、つくろったりしたって、父母のひざもとで暮らす幸福は、孤児の手に再び戻ってくることはない。