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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
大学の講義、臨時医学専門部の講義、いわゆる科学動員令による研究、結核予防のための工場、学校、同業組合などの集団検診、レントゲン診断、治療、ラジウム治療など、それはどの一つをあげてみても一人の医師、一人の教授に精一杯の役割となるものである。それを一人で果たせと命じられたのだから大変だ。精神ははやれども肉体は弱し、どうしても完全にはゆかなかった。その当時教室の看護婦たちが数え歌をつくって、私に聞かせてくれた。その中にこんなのがあった。――「三ツとせ。見れば見るほど好か男、部長先生の寝ぼけ面」……眠り不足と過労でやつれていた私を痛切に表現している。また「六ツとせ。無理な講義をせにゃならぬ、あれでは学生がかわいそう」……じっくり落ち着いた十分な講義をすることのできなかった私を適切に批判している。それから「十とせ。十でとうとうくたばった、ぜんそくおやじの冬支度」……とうとうくたばって、体の精力を使い果たし、たびたび倒れた私だった。その数え歌を勤務が終わって、器械の掃除をしながら皆で合唱していた。「五ツとせ。いつも真っ暗な暗室で、かわいいあの子の声がする」とか、「八ツとせ。