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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

その罪を悔い、心から改め、再び犯すまいと決心し、さらに罪と戦う勇気を求めて、立ち返ってくるまで根気づよく待ちなさるのである。この世の生命の終わる瞬間までは待っていなさる。しかし、ついに後悔せずに死んだら、もう万事だめだ。そうなったら完全に見捨てられた地獄だ。地獄へおちたら、もう救われぬ。地獄とは神と永遠に隔離された霊魂のおる、ひとつの絶望的な実在である。

「なんじらの中たれか、百頭の羊ありてその一頭を失いたらんに、九十九頭を野におきてその失せたるものを見いだすまで尋ねざらんや。さてこれを見いださば、喜びて己が肩に乗せ、家に帰りて朋友隣人を呼び集め、われ失せたりし羊を見いだしたればわれと共に喜べ、と言わん。われなんじらに告ぐ、かくのごとく、改心する一人の罪人のためには、改心を要せざる九十九人の義人のためよりも、天において喜びあるべし」

イスラエルの野にあってイエズスのこの話に耳傾けていた羊飼いたちは、お互いにうなずき合ったことであろう。羊飼いたちは皆、みずから同じ事件を経験していたからである。多くの羊の群れの中にはわがままな行動をとる羊もいて、主なる羊飼いの角笛の導きにそむいて、花にだまされ、水につられ、ついうかうかと危ないいばらのやぶに迷いこむ。