轻松读懂日语经典作品
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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
道で――
「おお、元気でやっとるか? 学校の帰りかな? アーン。よしよし。お前はいい家にもらわれて運がよかったぞ。このごろは戦災孤児の取り締まりもなかなかやかましくなってな、見つけ次第収容所へ送致することになっとるんじゃ。――ちっとは昔の仲間に会うことがあるかね。アーン。無いか? ウン。なるべく交際せぬがいいぞ。今のお家で迷惑されるからな。とにかく大いに勉強したまえ! そうして一人前になって、ご恩返しせにゃあかんぞ。ウン」
夕方――
「そんなことしたら、帰ってうちのお母ちゃんに言いつけるョ」
生爪をはがした小指には、平常はなんともない物がちょっと触っても、ずきんと痛む。痛みはするけれども、小指はその触った物を恨む筋合いはない。生爪のはげたこと、指の頭を護っていたものが無くなったから、触れば痛むのである。外部の触った物に罪はなく、小指にも落ち度はない。ただ生爪がなくなったという一つの災害の結果として、ちょっと触ると、ずきんと痛む。小指は何物をも恨まず、憎まず、ただ痛みを痛みとして堪えてゆくばかりである。爪のある他の指をうらやんだり、ねたんだりしてはならない。