轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しじみがし

しじみ河岸

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1954(昭和29)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,438 字 · 51 页

青空文庫

「なに、それほどのことでもないんだ」

律之助は軽く云いそらした。

彼は三日続けて冬木町へかよった。二日休んで、そのあいだの見聞を整理した。それだけでみると、まるっきり得るところなしであった。三日間に会って話した人間は、男女九人だったが、かれらはなにも語らない、誰も彼も云いあわせたように、「へえ」とか「そんなようです」とか「知りません」などと答え、少し諄く問いつめるとその返辞さえなくなり、木偶のように黙りこんでしまうのであった。

彼の知りたいのは左の三カ条であった。

――お絹と卯之吉は恋仲ではなかったか。他にお絹にいいよっていた者はないか。

――当夜、二人のほかに誰か見かけなかったか。

だが、どの問いにもはっきり答える者はなかった。

役人に対するかれらの敵意の激しさは、初めの日に経験した。子供たちまでが(むろん親や周囲の影響だろうが)敵意を示し、嘲弄するといったふうである。律之助は整理した記事を検討しながら、幾たびも溜息をついた。しかし、お絹は下手人ではない、という直感だけはますます強くなった。

「かれらはなにか知っている」と彼は自分に云った、「言葉を濁したり、とぼけたり、急に黙りこんだりするのがその証拠だ、あれは反感や敵意だけじゃない、慥かになにか知っているからだ」