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だだらだんべえ

だだら団兵衛

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1932(昭和7)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,271 字 · 25 页

青空文庫

宵の口論といい、一人途中から引返したことも知られていれば、もはやこれは云い解くすべのない罠だ! 八郎太はそう感じた。

「これは一時身を隠し、たしかにきゃつと睨んだ垣内彦六を探し出すより致しかたがない!」

そう決心すると、すぐに邸へ跳んで帰り、書状を添えて妻子を団兵衛に頼み、自分は国を立退いたのである。

かくて苦心転々三月。

ようやく彦六の居所をつきとめた時、折もよし梁川三十郎が、自分を仇と狙って探し回っていたのに会った。膝を交えて仔細に聞くと、その時主馬の愛蔵する菊一文字のひと腰が盗まれていたことを初めて知った。

「それこそ何よりの証拠!」

と雀躍して、三十郎を伴い彦六の隠家へ乗込むと、案の定拵えを変えてその刀を持っていた。そこで八郎太が後見のうえ、三十郎はみごと彦六を討って、ともどもめでたく帰国したのである。

「そうか、そんな事情であったか」

聞終った団兵衛も、余りに不思議な事件のゆくたてに、ほっと太息をもらした。

「団兵衛!」

光政がにこにこ笑いながら、

「そのほうよく八郎太の家族を匿ってくれたな、もしそのほうが余の達を素直にきいて、匿いおることを届出たなら、余はよしなき過をいたすところであった、礼を申すぞ、したが――」