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だだらだんべえ

だだら団兵衛

山本 周五郎

「キング」大日本雄辯會講談社、1932(昭和7)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,271 字 · 25 页

青空文庫

四

「忌々しい八郎太め」

とぶつぶつ云いながら退出した。

家に帰って静かに考えると、一旦光政に従ってここまで来て、かくまで懇望されるからにはこれも武士の面目、いっそ仕官しよう! と決心した。

かくてついに多々羅団兵衛は、池田家に二百石をもって仕えることになったのである。

ところが団兵衛と八郎太の仲の悪いこと、

「明日は晴れる!」

「いや雨に違いない」

そんな些細なことから、武芸の話、役向の詮議にいたるまで、二人の顔が合いさえすれば喧嘩であった。

「もうきさまとは口を利かぬ!」

「おお拙者も絶交じゃ」

そんな言葉が何度繰返されたか知れない、周囲の者もはじめは仲裁に入ったり、仲直りをさせたりして骨を折ったが、いつまで経っても果しのないのに呆れかえって、

「あれは前世で敵同志だったに違いない!」

「犬と猿を形にして見るようだ」

「捨てておけ、もうかまうな!」

そう云って誰もかまいつけなくなった。二人は結局それをいいことにして、その後も相変らず勢を張り合って暮していた。

そしてまた幾年か経った。

四

寛永十七年の春三月、上巳の節句の夜。

団兵衛の邸の裏口を忍びやかに叩く者があった。