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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页
岡村は走ってゆき、小野大九郎と松木久之助、それに足軽組頭の石岡源内を伴れて来た。隼人は綱の強さをためすのだと云い、自分と岡村とで一方につき、小野と石岡が一方についた。松木は巻いてある綱を繰り出す役で、ひっ掛けた杭を中心に、二た組四人の力で引きあいながら、一寸も余さず、順に辷らせてゆき、三巻きとも大丈夫だということを慥かめた。四人は雪をかぶったまますっかり汗をかいていた。
「よし、これを役所へ持ってゆかせてくれ」と隼人は石岡に命じ、岡村たちと戻りながら云った、「明日は下見にゆくから、この三人でいっしょに来てくれ」
「晴れたらでしょう」と岡村が訊いた。
隼人はぶっきらぼうに答えた、「吹雪でもさ」
岡村七郎兵衛は小野と松木に、唇を反らせながら肩をゆりあげてみせた。
明くる朝六時。足軽たち八人に綱を担がせて、隼人たち四人は木戸をでかけた。夜半に風が吹きだしたとき、雪はやんだらしいが、風が強いために、積った粉雪が舞い狂うので、しばしば視界を遮られ、なかなか道がはかどらなかった。源に教えられたとおり、一つめのかけはしを渡ると、左にはざまがあった。勾配の急な狭いはざまで、笹を掴みながらまっすぐに登り、登り詰めたところで右へ曲った。