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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页
十一
十一
梅雨にはいってから、組み太刀の稽古は休んだが、御用林の仕事は続けていたし、夜の立番もゆるめなかった。雨の夜はいいだろうと云う者もあったが、その雨がかなり強く降る夜半に、柵の外で梟の鳴き声がした。足軽二人が出ていってみると、頭から蓑をかぶった女が三人、柵にしがみついていて、「入れておくれ」と呼びかけた。――隼人はそれを見たのである。彼も梟の鳴き声を聞いたので、合羽をかぶってそっと戸外へ出、柵に沿って廻ってゆくと、女たちが足軽とやりあっているのをみつけた。女たちは思いきって卑猥なことを叫び、「入れてくれ」と、殆んど泣き声をあげて哀願していた。冬のあいだずっとがまんし続けたから、躯の内部でけものが暴れている、骨も身も焼かれるようだ、というような意味のことを訴え、一人は下半身をあらわにして、露骨な、あらあらしい動作をし始めた。
「よせ」隼人はこっちからどなった、「なにを見ているんだ、追い返せ」
二人の足軽はとびあがりそうになり、慌てて女たちを追いのけようとした。女たちは動くけしきもなく、下半身を剥きだしにした一人は、地面へ膝を突くと、両手で髪の毛をつかみながら、礼拝でもするかのように、続けさまにがくんがくんと大きくおじぎをし、その動作につれて咆えた。