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なつかしまれたひと
なつかしまれた人
小川 未明
「童話」1926(大正15)年3月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,245 字 · 11 页
」
「俺、こんど見つけたら、無理にも自動車に乗せてつれてこよう……。」と、若者はいったのでありました。
ある日のこと、おじいさんを見たという若者は、また自動車に乗って、その街道を走っていたのであります。
「いつか、この街道で、おじいさんを見たのだが、見つかってくれればいいがな。今日ばかりは、おじいさんをつかまえてやろう。そこで、場合によったら、自動車に乗せてつれてゆこう……。」と、前方をながめながら思っていました。
あちらに、森があって、その下に人家の見えるところへ近づいたときに、若者は、行く手に勘太じいさんが、あの破れた帽子をかぶり、見覚えのある半纒を着て、股引きをはいて、その時分よりはずっと元気がなく、とぼとぼと歩いている後ろ姿を見たのであります。
「おお、おじいさんがゆく……。」といって、若者は、それに追いつくと自動車を止めました。
「勘太おじいさんじゃないか?」と、若者は、わめきました。
おじいさんはたちどまりました。そして、うしろを振り向きました。
「勘太おじいさんじゃないか……。」
「ああそうだ。」と答えました。
「おじいさんか……。」といって、若者は、顔をのぞくと、いつのまにかひどくおいぼれて、両方の目が腐っていました。