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はたしじょう
はたし状
山本 周五郎
「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页
「今日のしのさんは見違えるようね」
母にもそう見えたのだろう、席を変えるとすぐに、しのを前後から眺めてそう云った。
「ほんとにお美しいわ、ふだん肌理のこまかい肌をしていらっしゃるのね」
「なにしろ身じまいということをしないのですから」
母親の加世が側から答えた、「――妹のほうは小さいじぶんから日に幾たびも髪をいじったり、隠れて紅や白粉を付けたりするんですけれど、この娘はもう叱るように云っても化粧などはしませんの、ですから肌だってもう荒れ放題で」
「そういえばみよさんはお洒落が好きのようね」
母はそう云いながら、脇から手を伸ばしてしのの髪をそっと押えたりした。しのは母親たちの言葉など耳にはいらぬようすで、膝の上に手を重ねたまま俯向いていたが、二度ばかり眼をあげて第二を見、そのたびに唇だけでそっと微笑した。……悲しいような、なにかを訴えるような、感情のこもった微笑であった。第二は眼でそれに答えながら、心のなかでこう呼びかけた。
――とうとう、こうなったね、しの、喜んで呉れるだろうね。
そのあくる夜、つまり出立する前夜のことだったが、親しい友人や同僚たちが「送り祝い」