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はたしじょう

はたし状

山本 周五郎

「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页

青空文庫

第二はすぐには封が切れなかった。だが思いきって披いた文面は、予想に外れていたばかりではなく、彼をうちのめすほど思いがけない、殆んど信じかねるようなものであった。

――この手紙を出そうかどうしようかと、自分はかなり迷った。

千久馬はそういう書きだしで、婚約の破れたことに同情を表し、そのいきさつは文字ではっきりとは伝えにくいが、しのは近く藤島英之助と結婚するだろう、それで万事を察して貰うほかはない。だいたいの文意はその程度であったが、その暗示的な書きかたには、事実そのものよりも強烈な印象を与えられた。

――藤島が、……英之助としのが……。

第二は急に躯の重心を喪ったような感じで、くらくらとなり、片手を机に突いて身を支えた。

藤島としの。第二にとって、二人がむすびついたということは、他のいかなるばあいよりも耐え難い打撃だった。しのがほかの誰かと、例えば千久馬とそういうことになったとしても、――必ずしも言明はできないだろうが、――それほどの傷手も受けず、もっと楽な気持でゆるせたであろう。だが英之助は違う、藤島だけはそうしてはならぬ筈である。藤島がしのとそうなることは、殆んど裏切りに等しい。