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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页
んですけれど、そんなわけで世帯を持ったのは五年そこそこ、子供が一人っきりだからまだ助かったほうでしょうが、やくざな亭主を持つとほんとに女は苦労しますわ」
「そうすると、子供さんはもう十くらいになるのね」
「いいえ、二十一の年の子ですからまだ七つですわ」
「あたしも亭主では苦労したわ」とおようが云った、「ほんとに、女の一生は伴れ添う者の善し悪しできまるのね」
「おかみさんはこれからじゃありませんか、三代も続いた津ノ正という、立派な老舗のごしんぞさんになるんですもの、これまでどんな苦労をなすったにしろ、苦労のしがいがあったというもんですわ」おつねは髪毛に水油を付け、櫛を変えて梳きながら云った、「あたしこちらへ置いてもらった初めから、津ノ正の旦那がおかみさんを好きだってこと、ちゃんとわかっていましたわ」
「それはあんたの勘ちがいよ」
「勘ちがいなもんですか、旦那の眼顔にちゃんと出ていたんですもの」
「それは勘ちがいよ、もしあの人にそんな気持があったんなら、あたしにだってわからない筈はないし、そうとしたらあの人のお世話にはなりゃあしなかったわ」