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めおとちょう

めおと蝶

山本 周五郎

「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页

青空文庫

文代の言葉つきにはいつもとは違って、なにか思いつめたような響きがあった。信乃はちょっと驚いて妹の顔を見た。

「あなたそれはまじめに仰しゃってるの、文代さん」

「まじめですとも、わたくしもうずっとまえからそう思っていたんです」

子供っぽくすましていた文代の顔が、そのとき紐を緊めるように硬くなった。

「藤田の弓江さまはもう二人もお子があるし、ほかのお友達もたいてい婿を取ったりお嫁にいっていますわ、その方たちのお暮しぶりをみていて、わたくしつくづく結婚というものがいやになったんですの、……もっと直接にいえばお姉さまよ、お姉さまだってこの上村へいらしって五年になり、甲之助さんというお子もあって、よそ眼には平穏無事にみえるかもしれないけれど、決しておしあわせでないということは文代にはよくわかっていますわ」

「まあ、あなたなにを云うの」信乃はびっくりして遮った、「――そんな乱暴なことを云いだしたりして、もし人に聞かれでもしたらどうなるの」

「ではお姉さまはおしあわせですの」文代はしんけんな眼でみつめる、「結婚して五年も経つのに、お二人のようすはまるで他人のようじゃございませんか、お義兄さまはあの石仏のような冷たいお顔で、なにもかも気にいらないという眼つきで、はかばかしくは口もおききにならない、お姉さまはただもう遠慮して、ご