轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
めおとちょう
めおと蝶
山本 周五郎
「講談倶楽部 春の臨時増刊号」大日本雄弁会講談社、1950(昭和25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,977 字 · 47 页
信乃はめまいがしそうになった、心臓が喉へつきあげるような感じで、腋の下に汗が流れた。
「――寝そびれたようだ、酒を飲もう」
こう云って居間で良人の坐るけはいがした。信乃は「はい」と答え、知也に手を振ってみせてから納戸を出た。
――良人が感づいた。
信乃はそう思った。こんな夜半に酒を飲むなどということは例がない、なにか気づいたので坐りこんだに違いない。こう思ったけれど、こんどは信乃は逆におちついた。いずれにせよ長い時間ではない、発見されたときは自害をするだけだ。できるなら知也を逃がして、……信乃は酒の支度をしながら、ひそかに懐剣の袋を解き、すぐ抜けるようにして、帯の間へ挾み入れた。
「おまえにも一つまいろう」
支度が出来て坐ると、良平はまず飲んでから信乃に、盃をさしだした。それを受取るとき、信乃の手は顫えた。
「どうした。ひどく顫えるではないか」
「いま驚いたからでございますわ、本当に面白いように顫えますこと」
「まるで悪事でもみつけられたようだな」
「――ええ、そうかもしれません」
信乃は媚のある眼で良人を見た。
「――仮にも旦那さまの眼に触れてはならないものを見られてしまったのですから、でもとつぜんはいっていらしった方も悪うございますわ」