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イエスでん

イエス伝

矢内原 忠雄

マルコ伝による

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 220,119 字 · 436 页

青空文庫

弟子たちの必死の努力もかいあらばこそ。彼らはイエスを揺り起こして「先生、私どもの亡ぶるを顧み給わぬか」と、急き込んでなじり気味に訴えました(四の三八)。(マタイ伝八の二五およびルカ伝八の二四には、こんななじるような言葉は見いだされないが、マルコ伝の方が真に迫った率直な筆致です)。イエス様は静かに身を起こして風と浪とを叱り給うたところ、たちまち前にまさる大凪となった。そして「汝ら何ゆえかく臆するか、汝らなお信仰なきは何ぞ」と、今度は反対にイエスが弟子たちをなじり給うた。弟子たちは甚だしく怖れて、「先生はなんという人だろう、風も海も順うとは!」と、互いに語り合ったのであります(四の三五―四一)。

急に烈しい突風が起こって浪が荒れ、少時間の後にまた急に凪ぐことは、山の湖水にはよく起こる現象であって、富士山麓山中湖にも幾度かそういうことがありました。しかしイエスが風と浪とをお叱りになったところたちまちそれが静まったという、そんなことがはたしてありえたであろうか。神の子イエスが神の力を用いて自然界を支配しえ給うことを、私は信じます。しかし奇蹟の記事をばできるだけ自然的に説明しようとする人は、かかる突風の性質として、来るのも突然であるごとく凪ぐのも突然である、イエスが起きて風波を叱り給うた瞬間は、ちょうど風の自然に